中国貿易

中国貿易

米国のトランプ大統領は2018年4月5日、中国製品に対して追加の関税措置を検討する方針を示しました。米当局はすでにこれまでに、500億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課すことを決定しています。今回発表された1,000億ドルを合わせると、合計1,500億ドル相当の中国製品に追加関税が課せられることになります。
2017年の中国から米国への製品輸入額は5,000億ドルですから、対象額はその3分の1にも及ぶことになります。

中国は米国が最初に発表した500億ドル相当の中国製品に対する25%の追加関税に対して、同規模の報復関税を課す方針を示しました。中国の報復関税案の対象には、米国産の大豆や豚肉が含まれました。米国への対抗措置を躊躇(ちゅうちょ)しない、中国の強い意志が読み取れる内容です。中国への輸出に大きく依存する米国の農業が、中国の報復措置によって打撃を受ける可能性が出てきました。
こういった流れを受けて、市場では「米中貿易戦争は避けられないのでは」との見方が広がりました。世界の株式市場も値を下げました。

しかし、中国の習近平・国家主席は4月10日に博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、市場開放拡大政策を発表しました。
市場開放の内容の主なものは、

(1)金融と自動車製造の分野で外資による市場参入規制を大幅に緩和すること、

(2)自動車や部品の輸入関税を大きく引き下げること、

等です。魅力的な投資環境を整え、国際ルールに則って市場の透明化を進めると同時に、知的財産権の保護、競争の促進、企業による独占の防止に努める方針が示されました。自動車分野の内容が多かった理由は、自動車セクターが米国の基幹産業の1つであるためだと思われます。習主席は米国の対中貿易赤字についても言及し、「中国は貿易黒字を追求しない」と語り、輸入拡大に努力すると強調しました。演説は、米国に対する強力なメッセージだったといえるでしょう。
トランプ米大統領はツイッターで習主席の演説について、「発言に感謝する」とつぶやきました。米中貿易戦争という最悪の事態が回避に向かうという安心感が市場に広がり、株価も上昇に転じました。
今後、米中は経済損失を最小限にとどめるために歩み寄りを進めることが予想されます。
しかし、今回は通商に関する一連の動きは、両国の大国としての威信と自国の経済発展に関する問題でもあり、簡単に解決することはないでしょう。スーパーパワーの米国と新興強国の中国。どちらにとっても譲れない静かな戦いは、長期化する可能性が高いと思われます。
最初に米国が発表した500億ドル相当の中国製品の関税対象リストには、電子機器、産業機械、医薬品の原料などだけでなく、電気自動車、ロボット、大型航空機といった、現在は中国からほとんど輸入されていない製品も含まれていました。米国が、未来の中国の技術力を恐れていることがうかがえます。
トランプ大統領のつぶやきに対して、中国外務省は「米国がさらに中国の利益を侵害するような行動をとるのであれば、ためらわずに反撃する」とし、くぎを刺すことを忘れませんでした。